令和7年9月 オンライン交流会 開催レポート / 地域の伝統継承と関係者づくりのポイント

2025年9月25日(木)、広島県チーム500によるオンライン交流会「地域の伝統継承と関係者づくりのポイント」を開催しました。
ゲストは、「編綯(アムナウ)」代表の陣内 綾さん。広島市南区出身で、大学進学を機に鳥取へ移住。修士課程のときに藁細工に出会い、90歳のおばあちゃんからその手技を教わりました。大学院卒業後の2022年6月に東広島市豊栄町の地域おこし協力隊に着任し、同年10月に「編綯 amunau」を立ち上げました。
藁雑貨の制作・販売やワークショップ講師として活動し、3年間の任期を終えた現在は、豊栄町に事業拠点を築くために日々奮闘しています。

地域おこし協力隊で取り組んだ“記録と継承”
陣内さんが着任した東広島市の地域おこし協力隊は「フリーミッション型」。自らの得意分野を生かして地域に貢献するスタイルです。陣内さんは「伝統的な手仕事の継承と保全」をテーマに活動。豊栄町で採れる稲藁を使い、藁細工の制作や民具の収集・活用を進める一方、地域の行事や祭りに関わる人々への聞き取りを重ね、その記録を冊子としてまとめました。
こうした取り組みが新たな縁を生み、近年では呉市など他地域からもしめ縄づくりの依頼が寄せられるようになりました。冊子としてまとめた経験が、他地域の「やり方を知りたい」「自分たちも復させたい」という声に応える形となり、文化の継承が地域を越えて広がっています

生業をつくる ― 藁細工を軸に多業で生きる
藁細工は季節に左右されやすく、素材の確保から制作・販売までを一年を通して続けることは容易ではありません。陣内さんは、繁忙期となる11〜12月にお正月飾りなどの制作・販売を集中して行う一方、他の時期にはワークショップ講師や受託制作なども行っています。
地域の人との関係づくりを大切にしながら、複数の仕事を組み合わせて生業(なりわい)を形にしています。「副業の“副”はサブではなく、複数の“複”だと感じています」という陣内さんの言葉どおり、手仕事を核に、地域と共に働く多様なスタイルを実践しています。

今後の展望 ― 豊栄町での拠点づくりへ
2025年5月に協力隊の任期を終えた陣内さんは、現在も豊栄町に定住し、活動拠点の整備を進めています。納屋を改装し、制作・販売・体験が一体となった工房兼ショップとして整備する構想を描いています。
将来的には、目の前の田んぼで稲を育て、藁を自家調達し、藁細工作品として完成させる“循環型のものづくり”を実現していきたいと話していました。藁細工や伝統に関心があるファンの方が気軽に立ち寄れる場所として、体験や交流の機会を生みながら、手仕事文化を次の世代へつなぐ拠点を目指しています。これからの進展が楽しみです。

まとめ
今回のオンライン交流会では、陣内さんの発表を通じて、地域の伝統を記録しながら継承し、それを軸に生業を築いていく姿が紹介されました。豊栄町で始まった活動が、呉市など他地域へと広がり、文化を“つなぐ人”を増やしていくプロセスこそ、地域づくりの本質を体現していると感じました。
今回の交流会も非常に多くの気づきと学びがありました。今後もチーム500登録者同士の交流を深める機会を創出していきます。次回のイベントは令和7年11月9日(日)10時から北広島町で現地交流会を開催予定です。ぜひご参加ください。