【チーム500登録者インタビュー】北広島町 後藤 祐美子さん
田舎と都会を混ぜた居場所づくりで
自分らしく生きるきっかけを与える
後藤 祐美子さん
カフェ五感 代表
-PROFILE-
広島市出身。会社員として働く傍ら、2021 年からカフェ五感の運営を行っている。2022 年度のひろしま『ひと・夢』未来塾では、地域密着型人材育成コースの最優秀賞を受賞。
後藤さんのキーワード
1. 居場所づくり
2. 田舎と都会のミックス
3. 私が私になれる場所
家族みんなで運営する
土日だけオープンの古民家カフェ
北広島町の大きな古民家を改装した「カフェ五感」は、パートナーのライアンをはじめ、家族と一緒に運営しています。ライアンは燻製やバーガーなどの料理を、私はそれ以外の料理を担当し、時にはイベントに出店して外部で販売も行っています。また、私の父と母も、この家のリフォームの段階から一緒に関わってくれていて、営業日にはお店のお手伝いにも来てくれています。
カフェのメニューには、ライアン特製の燻製を使ったメニューも提供しています。ベーコンやチーズなど、手作りの燻製料理を楽しんでいただけます。また、彼の地元アメリカではポピュラーだという「ビア缶チキン」も、ご要望に応じて、事前予約制で提供する予定です。これは、缶ビールの口を覆うように丸鶏を被せて90分ほど燻製器でじっくり加熱調理するものです。ビールのおかげで、しっとりとした仕上がりになり、見た目のインパクトもあります。
現在はカフェの本格的なオープンに向けて準備中ですが、イベントの開催は不定期で行っています。
2023年春に開催した「五感的春まつり」には、たくさんの方に出店していただき、お客様も大勢いらしてくださって大盛況でした。訪れた方がそれぞれに、自分なりの楽しみ方でここでの時間を過ごしてくださることが、私たちにとって何よりのよろこびです。
補助金を活用して駐車場を整備
ますます人が集まりやすい場に
これまでイベント時には、近隣の方のご好意で路上に車を停めていました。しかし人気が集まるにつれて台数も多くなり、駐車場の整備をしたいと思っていたのです。
ちょうどそのころ、知人が「元気さとやま応援プロジェクト補助金」を勧めてくれました。補助金を使うのはもちろん初めてで最初は戸惑ったのですが、県庁の方もサポートしてくださいました。夏頃には補助金の審査が終わり、念願だった駐車場の整備に活用することができたのです。
もともとが田んぼだった土地のため、雨の日にはぬかるむことも多々あり、本オープン前のタイミングで駐車場を整備できたことはとてもよかったです。
都会と田舎の要素をミックスして
自分たちらしい居場所づくり
私たちがここでカフェを開くことになった最初のきっかけは、北広島町で民宿をやっていた友人に、遊びにおいでと誘われたことです。それまで、一度も訪れたことはありませんでしたが、数回の訪問を重ねて、自然豊かなこの地の良さに惹かれていきました。そこから空き家バンクで家を探し始め、最初に見つけたのがこの家だったのです。見つけた瞬間、絶対にこの家が欲しい、と思いました。当時は、カフェ開業は全く考えておらず、ただとにかく居場所を探していました。私たちのやりたいことを自由にできる場所として、この家の見学を申し込んだのです。希望者が多くコロナ禍ということもあって難航しましたが、なんとか無事に購入することができました。場所が決まったことで、私とライアンが得意とする料理を活かしてカフェをするという案が出てきたのです。
普段は広島市内といういわゆる“都会”で暮らし、週末だけ田舎にやってくる私たち。地域の方からすると何者かわからず、壁を作られた時もありました。しかし、自分から地域に出ていって行事に参加したり、地元の方とまず打ち解けることを大事にしていきました。
土日は地域の人との関わりや豊かな自然のある“田舎らしい”生活を楽しみ、平日は便利さや新しさのある“都会らしい”生活を楽しむ。そんな暮らしで得た両方の魅力を知る私たちだからこそ、古民家の中にも快適さや都会的な要素を織り交ぜた新しい居場所づくりができるのではないかと思いました。
すでにあるものを守り、繋ぐことももちろん大切ですが、私たちにとっては都会と田舎がちょうどよくミックスすることで、その場所の可能性をもっと広げることができると考えたのです。
大人も子どももへだてなく
“私が私になれる場所”をつくる
ある時、イベントに参加してくれた子どもたちが何もない畑を走り回って、自分で新しい遊びを見つける姿を目にしました。そのとき、子どもたちの居場所として大事にしたいと感じるようになりました。
私の父は、幼い頃から押し入れを基地に改造してくれたり梯子を作ってくれたりと、子どもの目線になって本気で遊んでくれる人です。そんな父は、私と一緒にこの家のリフォームを行いながら、子ども用のスペースや椅子などを作ってくれたのです。そこから逆算的に「それなら隣のスペースでお母さんがゆっくり話せるといいよね」と、カフェスペースを整え始めました。一緒に運営する家族はみんな子どもの心を忘れていない大人たち。イベントでここに集まる人々もそんな方達ばかりなので、本気で楽しむ大人の姿を見せながら「こんな面白い大人がいるんだ」と感じてくれたら嬉しいです。
もうひとつ、私が大切にしていることがあります。それは、ここがどんな人にとっても自分らしくいられる場所になることです。私は彼と出会ったことで、毎日隣に異文化がある生活になりました。何に対しても「こうあらねばならない」という思考が強かった私にとって、考え方も文化もまるで違う彼といることで、肩の力が抜け、とても生きやすくなったのです。周りと足並みを揃えなくても、“私が私になれる場所”があれば、自由に自分らしく生きることができると思うのです。この「カフェ五感」を、誰もが本当の自分を思い出し、そして元気になってまた自分の生活に帰って行けるような場所にしていけたらと思います。