【チーム500登録者インタビュー】江田島市 後藤峻さん

【チーム500登録者インタビュー】江田島市 後藤峻さん


江田島の内外に魅力を伝え
誇れる風土を次世代につなぐ


後藤 峻さん


安芸郡出身。大学から関東に出たのち、2016年に家族で江田島に移住。現在はフウドの仕事をする傍ら、「江田島シーサポート」のメンバーとしてSUPの指導もしている。


後藤さんのキーワード


1. 江田島の外と内を繋ぐ
2. 企画者から実践者へ転身
3. 里海の魅力を次世代に




“外”と“内”が交わる風土を
様々な事業を通して作り出す



 私たち、一般社団法人フウドは、小さい会社ではありますが様々な事業活動に取り組んでいます。コミュニティスペース・フウドの運営、移住相談や移住者の仕事のサポート、企業誘致、 観光コンテンツの企画などです。私は、フウドの立ち上げ人であり代表理事を務めていますので、基本的にはどのプロジェクトにも関わっていますが、「フウド」の運営と、移住に関する様々な支援や空き家の紹介などは、「フウド」の為政館長が主に担当し、私は県外の人や企業と江田島を繋ぐ事業を主導しています。

 具体的には、江田島市役所と一緒に、首都圏の企業をメインターゲットとした企業のサテライトオフィスや本社機能を誘致するというもので、これまでに3社の誘致が実現しています。なぜ私たちが企業誘致をするのか。それは、江田島という場所の良さを知ってもらい、“ここに来てもらいたい”という思いがあるからです。また、江田島市のふるさと納税の寄付を増やすため、地域の特産品の登録を促進する事業も行っており、これも江田島のことを知ってもらいたいという思いから行っています。

 「フウド」という名前は「風海土」と書きます。風=外の人、海=瀬戸内海、土=地元の人を表し、“風が海を介して土と交わる”という意味を持っています。外の人が瀬戸内海を渡ってこの島にやってきて、地元の人と交わる、そんな場所にしたいという思いで名付けました。


 観光コンテンツである「えたじまものがたり博覧会」、通称“えも博”も、様々な企画を通して、参加者に江田島の暮らしを知り体験してもらうものとなっています。新型コロナウイルスの影響でこれまでオンライン開催のみでしたが、2022年にようやく初めてリアルで開催できました。県内外からの参加者に、海や山を楽しみながら江田島を知ってもらう、良い機会になっていると思います。その他の観光コンテンツに関しては、旅行会社と一緒にプログラムを企画したり、独自に観光プランを作って運営しながら、島内の人、島外の人それぞれに、島の価値を体感してもらうため、私たちはあくまでもコーディネーターやプロデューサーとして関わっています。


島の自然と人の豊かさに魅了され
移住、そして、起業


 江田島に出会ったのは6~7年前。当時は東京でまちづくりのコンサルタントの仕事をしていました。全国のさまざまな地域を訪問しながら、地元の人々と「どうやったら地域がよくなるか」を考えながら一緒に仕事をしていました。プランニングにとどまらず、地域づくりの事業も実施。とてもやりがいがあり楽しかったのですが、関わる人を見ているうちに、自分も実際に地域づくりの現場側で活動してみたいな、という思いになっていることに気付きました。地元である広島で、地域をよりよくする活動を生業としてみたくなったのです。

 そんな思いを持ちつつ広島にUターンを決め、どこかの島に住みたいと思って最適な場所を探し始めました。そうして、これまで存在は知っていたけれど、風景や生活感などは全く知らなかった江田島に出会ったのです。とても素敵な海があり、実家のある府中町からも1時間圏内の場所にこんな環境があることは、私にとって新たな発見でした。同時に、ここで暮らしながら自分も何か活動ができたらいいなと思うようになりました。


 江田島に移住を決めた頃、ちょうど江田島市が初めての地域おこし協力隊を募集すると耳にしました。自分がやりたいと思っていた地域づくりの活動を、この機会に実現できるのではないかと考えて応募したところ、ご縁があって2016年4月から3年間、地域おこし協力隊として活動させていただきました。

 「フウド」の始まりは、この協力隊時代に取り組んだ「江田島人物図鑑」がきっかけです。その名の通り、この島に住む魅力的な人を紹介するというもの。島で出会う人々がとても素敵な人たちばかりで、島外の人に知ってもらうのはもちろんのこと、島内の住民同士でも繋がるきっかけにして欲しいなと思い、立ち上げました。その結果、たくさんの人との出会いがあり、これは私にとって大きな財産になっています。

 中でも大きな出会いの一つとなったのは、現在「江田島シーサポート」の代表を務める末岡さんです。普段は消防士として働きながら、休日はライフセービングやシーサポートの活動を行っていて、SUPをいち早く島に導入した人でもあります。海に興味をもってもらうことやSUPの体験スクール運営などを通して、彼が実践している“身近な海を次世代に繋ぐ”という思いに共感し、私も一緒に活動したいと思いました。そこから私自身もSUPや海での活動を始めたので、移住者としても海の活動においても、まさに私の師匠のような存在です。


大好きな第二のふるさと・江田島
誇れる風土として次世代へ


 これまでの活動や人との出会いを通して大好きになった江田島の海。より良いものにしていきたいとの思いで始めた事業のひとつが、現在行っている「えたじま未来の海づくり大作戦」です。江田島は県内有数の牡蠣の生産地ですが、皮肉なことに海のゴミの多くは牡蠣の養殖により発生しており、社会問題になっています。この問題をネガティブに捉えるのではなく、未来を見据えて行動していくことが事業の目的です。


 普段主にやっているのはビーチクリーン活動です。ただ、私たちがやりたいのは“活動”という堅苦しいものではなく、できる人ができるときに海岸のゴミを拾うというもの。生活の中にその時間を組み込んで、日常的にやっていきたいと考えています。

 またこの活動は、広島県が主催する「ひろしま版里山エコシステム」に登録しています。これは、私たちのような中山間地域で課題解決に取り組む団体の活動を、地域貢献に関心のある企業に企業版ふるさと納税を活用して支援してもらう、というものです。私たちは地域をよくするための環境づくりを行っていますが、活動資金を生み出しにくい現実があります。そういった面でこの事業は、登録者の活動への思いを直接届けることができ、共感し支援してくれる企業が現れるという仕組みと考え方に魅力を感じています。


 移住して6年が経ち、第二のふるさとになった江田島。これからも自分の子供たちやこの島に住む人たちにとって、誇れる場所=風土にしていきたいと思っています。そのために大切なのは、この島のファンが増え、多くの人が訪れることで「自分たちの町って“いい感じ”なんだ」と島民それぞれに自分で感じてもらうこと。外からの評価は一つの基準になると思うからです。人や企業と島を繋いで、価値を高めることが私たちの役割だと思っています。私たち大人がどれだけこの場所で生き生きと暮らし、「好き」を表現できるかを大事にしていきたいです。