【チーム500登録者インタビュー】大崎上島町 松本 英紀さん
農家が営むカフェギャラリーは
踏み出す勇気をくれる場所
松本 英紀さん
Shiki Farm 代表
-PROFILE-
長崎県出身。2019 年に神戸から移住し、柑橘農家になる。現在は奥様と3匹の犬と暮らす。
松本さんのキーワード
1. 農家に転身
2. 移住者の暮らし
3. 人の集まる場づくり
移住して柑橘農家に転身
念願の犬との暮らしもスタート
私は、2019年にこの島に移住してから柑橘農家になり、2020年に「Shiki Farm」をスタートしました。現在はみかん、レモン、デコポンに加え、オリーブも少し育てていますまた、年間を通じ20〜30種類ほどの野菜を低農薬で作っていて、野菜の栽培は主に妻が担当しています。収穫したものはカフェに隣接するマルシェで販売したり、柑橘類を妻がフルーツカードに加工してカフェで提供していて、瓶詰めでの販売もしています。
移住後に購入した古民家で運営するカフェは毎週土曜日のみの営業で、季節の果物を使ったスイーツなどを提供しています。ギャラリー展がある場合は平日でもお店におりますが、それ以外の日は果物や野菜のお世話をしたり、妻は染色の商品を制作したりしています。
また、敷地内にはドッグランも整備していて、飼い犬を連れて私たちが飼っている3匹の犬たちに会いにきてくださる方もいます。 マルシェ、ドッグラン、カフェを合わせて「シキパーク」と呼んでいて、開放的な場所でゆったり楽しんでもらえたらと思っています。
補助金を利用して
みかん倉庫をギャラリーに
カフェとして利用しているこの物件には、倉庫がついていました。元みかん農家の方が使っていた古い建物で、当初中はゴミだらけで手がつけられないほどでした。しかし、少しずつ片付けていくうちに全貌が見えてくると、倉庫ならではの広さと昔ながらの建物の味わいがあり、意外とよい空間だと気づいたのです。そこからこの場所を、倉庫ギャラリーとして活用してみてはどうかと考えました。
これまで島内には、絵や写真が上手な方はいるものの、展示する場所があまりなかったため、倉庫を活用して飾る場所を作れば、たくさんの方に喜んでいただけると思いました。
そんな時に見つけたのが「元気さとやま応援プロジェクト補助金」です。この補助金を活用してピクチャーレールと照明を設置しました。よりギャラリーらしくなったことで、土壁の風合いともマッチし、とても素敵な雰囲気になりました。おかげさまで現在は、続々とギャラリーの利用者が決まってきています。
初めて訪れて移住を決意
4ヶ月後に始まった島での暮らし
私は移住してくるまで約30年間、金融系のサラリーマンをしていました。しかし50歳をすぎて残りの人生の時間を考えた時、“人間らしい仕事をしたい”と思ったのです。ちょうどそのころ、会社としても早期退職の募集があったので、それに乗っかって辞めることにしました。
ある日、妻の知人がいるということで、たまたまこの島に遊びに来ました。すると、ふたりともこの島を気に入ったので、直感に従ってここに移住することを決めたのです。念願だった大きめの犬を飼える環境というのも、決断したポイントのひとつでした。その後とんとん拍子に住む家も決まり、初めて訪れた4ヶ月後には移住してきました。
移住してきた当初は、漠然と農業をしたいと思っていましたが、カバンより重たいものを持ったことがないような人生でしたし、土ももちろん触ったことがなかったので何もわからない中で、荒廃した畑を耕すところから始まりました。
妻の知人に農業をしたいと話したところ、いい人がいると紹介され、その方に柑橘の育て方を半年ほど学びました。その後、また別の方の紹介で柑橘農家さんの立派な畑を引き継ぐことになったのです。人のつながりのおかげで、どんどんやりたいことが実現していきました。
田舎は閉鎖的だとよく耳にしますが、この島はちょっと違います。移住者も多いせいか、島の人は真面目に頑張ればとても応援してくれて、気にかけてくれます。垣根もなく大きなファミリーのような感じで、居心地が良いなと感じます。
面白い人もことも点在する
“ファンキーな島”を目指して
妻は元々染め物のプロで、神戸では仕事をしながら週末にはろうけつ染めの先生をしていました。移住後に別の染色法を探していたある時、私が剪定したレモンの枝葉で草木染めをしました。するととても綺麗な黄色に染め上がったのです。その後、ブルーベリーや栗の木など100種類以上の草木で試してみました。本来であればレモンの枝葉は、燃やしたり捨てたりしなければならない厄介者。しかしそれからは、草木染めの材料として使ってもらい、妻も草木染め専門でワークショップを行っています。自然な色合いで、体験する人にもとても喜んでいただいています。
こうして今、少しずつやりたいことが形になってきた中で、なんでも夢で終わらせずにまずやってみるということが大事だなと感じています。多くの人は「やりたいけどお金が…」などと言いますが、私はいつも「けどじゃなくて、やっちゃえ!」と背中を押してみます。そして私達が活用した制度や補助金なども伝えてみると、勇気が出るようです。
誰でも、第一歩を踏み出すのはものすごく勇気がいること。だからこそ、誰かが背中を押さないとできないこともあります。私はこのカフェやギャラリーが、なんでも喋れる場所になれたらいいなと思っています。何かをやりたいけど迷っている人こそ、さまざまな人と話して刺激を受けると、行動につながり、いずれ結果はついてきます。そういう人々と一緒に手を合わせて島を盛り上げていきたいのです。面白い人や場所が点在する“ファンキーな島”にできたら、島外からももっと足を運びたくなるような素敵な場所になると信じています。