【チーム500登録者インタビュー】三次市 藤井 皇治郎さん

【チーム500登録者インタビュー】三次市 藤井 皇治郎さん


薪ストーブとバウムクーヘンで
伝える“語り合う時間”の大切さ



藤井 皇治郎さん

薪ライフ 代表


-PROFILE-

三次市出身。地元のパン屋で19 才からパンの製造に携わり、2019 年から独立して「薪ライフ」を立ち上げる。



藤井さんのキーワード
1. 生活から市場価値を見出す
2. 点と点をつなぐ
3. コミュニティづくり



薪ストーブを設置したことで
気づいたビジネスチャンス



 私は、三次市で「薪ライフ」として薪の販売や薪ストーブの代理店を行っています。2019年から事業として立ち上げ、その後、2020年からはポータルサイトで薪ストーブや薪の販売を行っています。薪ストーブとは、その名の通り薪をくべて火を起こす暖房機器です。一軒家の住宅であればだいたいは後付けすることが可能で、家全体が温まることから、近年注目度も高まっています。薪の使用量は、ひと冬で広島市内の南側の住居で1.5トンほど。三次市内のエリアでは3トンから4トン使います。金額にすると10〜15万円程度。薪ストーブは、家全体が温まるので結露などもなく、冬はストーブの上で調理もできるので、設置した方はみなさん「設置してよかった」と言われます。

 私がこの事業を始めるきっかけになったのは、薪ストーブを自宅に設置した2011年の冬です。使っている知人の家で実物を初めて体験した時、その暖かさに驚きました。そしてその翌年、自宅に設置しました。



 当然のことながら“薪がいる”ということが後からわかり、薪の入手方法を考えました。その当時は、県外の薪事業者か、地域のおじいちゃんがコツコツ自宅で薪を作って溜めているくらいしか販売しているところはありませんでした。そのため、自分が薪を作って売ればいいということに気づきました。当時はまだパン屋で働いていたので、小規模で薪を売ることから始めたのです。


需要は必ずあると信じて
突き進んだ薪事業での独立




 私は伐採作業はせず、原木や薪の状態になったものを仕入れます。薪割りは、就労支援施設(作業所)とタイアップして作業して頂いています。それをお客様のところに配達したり、薪ストーブ屋さんとも繋がりを作ったりと、地道に活動してきたことで、購入してくれる方が少しずつ増え始めました。その後、これからは自分が楽しめる方をやろうと、パン屋を退職しました。

 とはいえ大きな母体の事業があるわけではありません。薪販売の需要があるということだけを信じて事業化しました。おかげさまで事業化後の売上は、毎年前年120%で推移しています。



地元の米粉にこだわった
バウムクーヘンを布野の名物に



 ラジオでたまたま「株式会社ユーハイム」さんが新たにバウムクーヘンを焼く機械のリースを始めると耳にしました。その時、なぜかピンときました。日本のバウムクーヘン発祥の地である似島へも薪の配達に行っていましたし、薪事業を始めるまではパン屋でバウムクーヘンを作っていた経験もある。「自分にもできるのかな?」と、まずは会社に問い合わせてみました。

 パン屋時代には、米粉を入れてバウムクーヘンを作っていたこともあり、もし自分が作るなら三次市産の米粉100%のものにしたいという想いも伝えてみました。幸い、「株式会社ユーハイム」さんから出された条件にも添加物を使わないことが上がっていたため、私がやりたいこととうまくマッチして、リースの話は比較的スムーズに決まりました。

 今の時代、グルテンを控えたい方や素材に気を遣っている方はたくさんいますし、せっかくこれから作るなら、そんな方にも喜んでもらえるものを作りたいと考えました。

 このバウムクーヘン事業を始めるにあたって、「元気さとやま応援プロジェクト補助金」を活用させてもらい、必要な機材の購入をさせていただきました。作業場が「道の駅ゆめランド布野」ということもあり、今後は町のお土産品の一部としても認知されるといいなと思っています。



 ちなみに、商品名の「リスおじさんのバウムクーヘン」は、私の薪事業に関連しています。年中薪を溜めている姿がリスみたいと知人に言われたことからヒントを得て「リスおじさんのバウムクーヘン」というネーミングにしました。買っていただく方に、親しみをもってもらえたらと思っています。



事業を通して伝えたいのは
集まって語り合う時間の大切さ



 コロナ禍に入った最初の年は、前代未聞の状況で薪ストーブを求めるお客様の動きもストップしていました。しかし、長期化してきて暮らし方が変わってきたことで、“今まで旅行に使っていたお金を、家で過ごす時間に使おう”という想いで、薪ストーブを購入される方も少しずつ増えてきたと感じます。

 しかし薪ストーブを取り入れるご家庭は、県内でも年間100件くらいのペースでゆっくり増えてきており、まだまだ発展途上です。今後は、私自身が薪ストーブを取り入れて経験した、“火のある部屋にみんなが集まる”という家族の変化や、薪ストーブのある暮らしの提案も積極的にしていきたいと思っています。そして薪は三次で取れる地産の資源でもあります。地元のものを使って、あたたかいつながりができていけば嬉しいです



 また、一見薪販売とはかけ離れた事業にも思えるバウムクーヘンの製造ですが、これを始めたことで、新たなまちづくりの形も見えてきました。それは、バウムクーヘンを食べながら住民同士がコミュニケーションを取れるような機会や仕組みを作るということです。


 薪ストーブの前に自然と人が集まるように、このバウムクーヘンも、人と人をつなぐツールのひとつになると感じます。コミュニケーションの中心に入り、和やかな雰囲気で語り合うことができれば、地域を活気づける役に立てるのではないかと思うのです。「集まって語り合う時間」の大切さも、一緒に伝えながら、自分にできることで、この地域のまちづくりに貢献していきます。