【チーム500登録者インタビュー】廿日市市 金澤萌さん
まちづくりは「暮らし」の延長線
自分も町も求める機能をつくる
金澤 萌さん
合同会社とこらぼ 代表社員
-PROFILE-
山口県出身。埼玉で左官業で独立後、4 年前に広島に移住。2021 年には合同会社とこらぼを立ち上げる。
金澤さんのキーワード
1. 町に開かれた商店
2. シェアキッチン
3. 暮らす人の目線を大事に
古いものを地域から集め
また別の人の手に還元していく
私は左官業の仕事をしつつ、廿日市市佐伯にある「ナガスタ」を拠点にまちづくりを行っています。「ナガスタ」は、元々ナガタストアーというスーパーでした。その場所を2020年に借り受け、地域の人たちが持ち寄るいらなくなったものを回収して、綺麗にして販売する古物店を始めました。
また、そこに集まる古物を使ったアップサイクル品を作家さんが作って納品してくれるので、それらが並ぶ場所も、作家さんのレンタルスペースとして活用しています。
そのほかのレンタルスペースとしては、大部屋、小部屋、そしてシェアキッチンがあります。シェアキッチンには、飲食製造と菓子製造の2ヶ所あります。飲食製造では、一般利用に加えて、「ナガスタ」のカフェスペースで提供する料理やテイクアウトのお弁当などを作っています。
漬物製造と惣菜業の許可をとっていますが、意外とそちらの需要よりも菓子製造の方が需要があることもわかってきました。菓子製造の利用者は、店舗を持たずにお菓子を販売する方がほとんどです。
おかげさまで、口コミによって利用者が増えてきております。広島市内からわざわざここまでスペースを借りにこられる方も多く、利用者の6割ほどは廿日市市外からです。
まちづくりの広がりに
“シェアキッチン”
2022年8月に「ナガスタ」はリニューアルしたのですが、それに向けて、シェアキッチンの整備を行い、「元気さとやま応援プロジェクト補助金」も、その資金として活用させてもらいました。
シェアキッチンの構想を考えるきっかけになったのは、私が以前住んでいた埼玉県での経験からです。私は移住前、埼玉県で事務所兼アトリエを運営をしていました。周りの地域活動を行う団体と交流する中で、シェアキッチンがある場所の活動が広がっていく様子を目にし、地域活動には絶対必要な場所だと思っていたのです。
事前の調査では、広島県にはまだそういったサービスを提供する店舗数は少なかったため、山間部に安く借りられる場所があれば、需要はあると考えました。
「町とつながる暮らし」が
おもしろいと気づいた
私が今、地域活動を行うようになったのも、埼玉での暮らし方がきっかけでした。夫が仕事で忙しく、子どもが生まれてからは家事・育児をほぼ一人で担っており、自分の現場と保育園と自宅を往復する日々を続けていたのです。そんな中で、生活をうまく回すためには現場じゃない仕事場所が必要だと思いました。ひたすら外に通い続けるのは、責任を負うことも含めて難しいと判断し、左官業の事務所兼アトリエという形で2014年に物件を借りました。そこからは、100%現場に出るのではなく、事務所を拠点にしたワークショップ活動も始めました。
実は、その事務所はすでに再開発が決まっており、数年後には取り壊される予定の場所。そのため家賃も安く、比較的自由度もありました。また、そんなエリアに新しい店ができたことで、再開発に反対している若年層が集まってくるようになり、建物がなくなっていく過程で「どうせなくなるなら遊ぼう」という考えのもと空き店舗でイベント活動も実施。やがて、草加市の「リノベーションスクール」担当者の目にも留まり、講師として関わることもありました。スクールで出会う全国の街づくり関係の方も面白い方ばかりで、その出会いも今の活動に生きています。
アトリエは2021年に更地になるまで続きました。拠点を作ろうと思ったことはなかったですが、アトリエを作ったことで人が集まり始め、仕事人間だった自分が「こうして地域の人と繋がっていく=暮らすことって面白いんだな」と初めて知ったのです。
人・もの・ことと“コラボ”して
自分も住む町の暮らしを豊かに
「ナガスタ」を運営する私と黒木さんとで、2021年に「合同会社とこらぼ」を立ち上げました。この名前には、「地域といろんなコラボをしながら、いろんなところをラボにしよう」という意味が込められています。私自身、関わる人が増えるほど広がりを実感できて、楽しいと感じるようになりました。地域でも、そんなふうにいろいろな人・もの・こととのつながりが生まれたら、暮らしが楽しくなるのではないでしょうか。
シェアキッチンを有効活用してアップサイクルの新しい取り組みとして始まっているのが、アドバイザーさんに指導してもらいながら取り組んでいる、キムチの商品化です。原料となる野菜は、地域の人が作ったけれど規格外で出荷できないものや食べきれないもの。それらを引き取る代わりに、ここで使えるポイント制度など、お互いに気持ち良いやりとりができる方法を検討しています。また、空き家を活用して下宿の受け入れも始めました。近くの「佐伯高校」に通う子どもたちが、4月から数名暮らしています。空き家の活用としての一例を作りながら、シェアキッチンで子どもたちの食事を作ってサポートしています。
さまざまな事業を始めていますが、その根底にあるのは、“ここで暮らす自分たちが欲しいと思うものがあるまちをつくる”ということです。地域を盛り上げたいとか元気にしたいという想いよりは、「こういう店があったら便利だし楽しそう」と思うことを、地域に提案しながら形にしているところです。それが結果的に、地域の活気を作り、人の集まる場所になるのではないかと考えています。