【地域づくり事例】安芸高田SDGsの取組~未利用資源(耕作放棄地・空き家)を利用して、みんな笑顔に〜

【地域づくり事例】安芸高田SDGsの取組~未利用資源(耕作放棄地・空き家)を利用して、みんな笑顔に〜


【団体プロフィール】

令和4年度 ひろしま里山グッドアワード 未来のたね賞受賞

一般社団法人地域QOL 研究所 (安芸高田市)

安芸高田市を拠点に活動する、非営利の地域づくりコンサルティング。

地域の生活の質の向上を目的とした企画や研究などを行っている。


地域のニーズを汲み取り
ワークショップで深堀する



 安芸高田市は、美しい自然や歴史のおもかげが残る町としての名所がありますが、空き家や耕作放棄地といった未利用資源もたくさんあります。それらの“資源=魅力”を掘り起こしながら、地域のQOL(生活の質)に関するニーズに合った企画を運営したり、課題解決のための研究開発を行ったりするのが私たちの主な活動です。

 地域のニーズとひとことで言っても、その種類はもちろん多種多様です。ニーズのヒントは、いつも地域の方とのコミュニケーションの中にあります。町の行事で住民同士が集まった時などに、「ここがこうなったらいいと思うんだよね」といった声が上がると、それらを私たちは全てニーズと受け取ります。そして、そこからテーマを掲げたワークショップを開催します。ワークショップでは、テーマに合わせて地域の人だけでなく、専門的な知識を持つ方にも集まってもらい、課題を解決するためのアイデアを出し合っていくのです。



 これまでに実際に行った活動の例として、「花と歴史街道」という取組があります。安芸高田市内には自然や歴史を感じるさまざまな名所があります。それは、春に咲くカタクリやミツマタ、菖蒲などの花の名所、点在している毛利元就由来の土地、そして江戸時代から現在も残る豪商の庭園などです。
 この企画については、2021 年のさとやま未来博にてオンラインでワークショップを開催し、これらの場所をうまく繋ぎ、なおかつ健康的な生活に生かすべくウォーキングコース作りをするという企画が立ち上がりました。この企画は形になるまでに時間がかかると考えていますので、これから数年かけて取り組んでいくことになりました。


長年興味のあった地域づくり活動は
友人の一言から動き出した



 代表理事の田村は、若い頃から里山での活動に興味を持っておりました。電力会社に長年勤めたのち、会社員時代の後半は5年ほどシンクタンクに所属。地域づくりや地域課題の解決に向けた研究・開発などに取り組んでいました。その後2017 年から地域づくり活動を本格的に行うようになり、友人も増えてきたこの安芸高田市で活動を開始しました。
 そのきっかけとなったのが、現団体の法人化前に立ち上がった「えんがわ創作プロジェクト」です。その名の通り、「ギャラリーえんがわ」という名前のカフェギャラリーを、田村の友人がオープンさせることを機にはじまった活動です。このギャラリーが人の集まる場所になったらいいなという、オーナーのつぶやきを聞いた田村が主導となり、地域を巻き込む企画を作り始めました。田村が育てた藍を使って藍染体験をしたり、カフェの敷地内にピザ窯を作ったりと、現在もさまざまな活動を行っています。



 立ち上げた当時はこのプロジェクトに関わる人々に対して、“応援団”という形で接してもらっていました。何か企画の旗をあげる時に応援してくれる人は、普段から顔の見える関係の方が良いと思ったからです。
 そして、より幅広く地域課題の研究や地域づくり活動ができるようにと、専門性のあるメンバー3人と2018 年に法人を設立。メンバーはそれぞれ、農業や別の事業と並行しながら、団体としての活動を行っています。プロジェクトを機に集まったメンバーですが、今では安芸高田市の未利用資源活用に生かす取組だけでなく、他の団体へのアドバイスや人材の紹介などもできるようになりました。


“みんないいね”と言える町へ
今ある資源をさらに活用する



 私たちの活動の根本にあるのは、安芸高田市を“みんないいね”と言える場所にしたいという想いです。意見の違う人や障がいがある人に対しても、誰もが相手を受け入れ、認め合うことから、地域の元気づくりは始まると思うからです。
 現在着手している、安芸高田出身の日本画家・和高節二の原画保存活動については、ワークショップを通して広島市立大学芸術学部の学生たちと一緒に手入れなどを行っています。生まれ育った地で絵を描くことにこだわった画家の、逝去後30年経った今も残る原画を、大切な未利用資源として地域づくりに活かしていきたいと思っています。
 2022 年には広島県の「元気さとやま応援プロジェクト補助金」をいただくことができ、その補助金で新たに古民家を借りました。空き家問題の解決のため、まずは私たちがここを借りてワークショップを開催し、空き家の活用方法を地域のみんなで考えています。



 また、閉校になった小田東小学校の活用について2022 年に安芸高田市と協定を結びました。今後はここを「SDGs 研修センター」と名づけ、地域の子どもたちにも参加してもらい、子どもならではの発想も取り入れながらSDGs について実践的な学びを深める場所にしていくつもりです。古民家とこのセンターを新たな活動拠点とし、引き続き未利用資源を活用した地域づくりをしていきたいと思っています。
 そして将来的には、安芸高田市で実施した取組を一つのモデルに、今後さらに中山間地域での活動の幅を広げる予定です。地域のニーズをつかみ、ワークショップで住民と一緒に解決策を見つけていくという手法で、元気な里山作りを行っていきます。