【地域づくり事例】竹林整備と再生

【地域づくり事例】竹林整備と再生


【団体プロフィール】

令和4年度 ひろしま里山グッドアワード 未来のたね賞受賞

中国四国里山整備振興会 世羅郡世羅町

2014 年に発足した、竹林整備などを行う団体。世羅町の竹林を中心に各地で伐採などの整備を行う。


広島が誇る特産品の「牡蠣」
支えるのは良質な竹材



 私たちは、竹林の竹の切り出しから運搬、販売までを全て自分達で行っています。竹材の購入者のほとんどは牡蠣の養殖業者さんです。養殖用の牡蠣筏には、孟宗竹(もうそうちく)という竹が使われます。
 一般的に牡蠣筏の竹材の寿命は4年ほどと言われていますが、その質によってやはり耐久年数が変わります。質の悪い竹だと1年でだめになりますし、質の良いものは6.7 年保つものもあります。筏の中で一部の竹が腐ると沖の方でバラバラになりかねませんから、牡蠣養殖業者の方は竹材がだめになると、その都度新しい竹材を購入し筏を組まなければいけません。竹材が2年長く保つだけでも、購入や組み直しにかかる経費を抑えることができるので、みんな質の良い竹を欲しがるのです。



 そのため私たちは選別にもこだわり、本当に質の良いものだけを届けるよう努力しています。竹の良し悪しを判断するには、節の色や太さなど見分ける部分がいくつかあります。最も質が良いと言われるものは、成長がピークに達し根元の色が黄色っぽく変化したものです。しっかり選別して納品すると、お客様からは「これは10年は保つかもしれんね!」といったお褒めの言葉もいただいており、徐々に口コミで私たちの竹材が広まってきました。
 主な活動拠点は世羅町です。伐採も竹材の納品先も県内がほとんどですが、依頼があればごく稀に、中国地方の各地や兵庫県の西部まで納品に行くこともあります。伐採の依頼としては最近は県内だけでなく島根県の方からの問い合わせもあります。みなさん、整備しきれなくなった竹林に困っておられますから、できる限り対応したいと考えています。


偶然見かけた竹の運搬から
竹林整備の事業がスタート



 私たちの活動の始まりは、代表の眞鍋が2009 年に一人で始めた竹の販売でした。当時、眞鍋は会社員として働きながら、収入面などを考慮して別の仕事を探していました。そんななか、仕事で海沿いの地域に行ったあるとき目にしたのは、牡蠣の養殖業者さんが海に竹材を降ろしている姿でした。そのとき眞鍋は、若い頃に竹を切り出すアルバイトをしていたことを思い出し、「これなら自分にもできる」と思って副業で竹材を切り出すアルバイトを始めたのです。
 最初のうちは、眞鍋が一人で竹をノコギリで切ってはとにかく牡蠣業者さんを回って営業をかけました。どこに行ってもなかなか商談がうまくいかず大変でしたが、あるとき1つの業者さんが購入してくれました。なぜ買ってくれたのかを聞くと、「竹が足りなくて困っているから」と返答が返ってきたのです。そこで竹材の現状を知りました。



 当時その養殖業者さん曰く、竹材はいつも決まった卸業者から購入します。竹が足りていないからと他のところのを買ったために、別の業者が卸してくれなくなっては困るという懸念もあったそうです。それならば自分が役に立てるかもしれないと思い、本格的に竹材の切り出しや運搬業を始めました。
 現在のメンバーは、みんな副業でこの仕事をやっています。代表の眞鍋は運搬業ですし、それ以外には定年退職後に農業をしながら活動する人や、スポーツ選手として活動する傍らで生活費のためにここでアルバイトをするなどさまざまです。週に数日、みんなで集まって竹材の切り出しなどの作業を行いますが、重労働だからこそ、楽しみながら取り組んでいます。


人材不足により連鎖する課題は
竹の加工品開発などで打開する


 竹材を販売する業者は年々減っています。事業者の高齢化と後継者不足、採算が取れないなどといった理由でやめてしまう業者が多く、状況は深刻です。昔は伐採とともに筍を販売して収益を得る方法もあったようですが、中国産の筍が国産よりも安く市場に出回るようになった今では、そんな業者も減りました。そのため、事業として成り立たせるには竹材を値上げするしかなくなってしまい、その価格が高騰した皺寄せは牡蠣養殖業者さんに行くという連鎖が起きているのです。


 そんな状況を打開するため取り組んでいるのは、竹材の加工品の製造・販売です。主に、竹をパウダーにして堆肥を作っています。竹パウダーとは、筏用の竹としては商品にできないものや笹の部分などをチッパーと言われる機械で細かく砕きパウダー状にしたものです。これを使っていただいた米農家さんは、田んぼに撒くと米の美味しさの基準となる“食味値”が驚くほど上がると喜んでくださいます。また尾道市の「道の駅クロスロードみつぎ」で販売しているパウダーの小袋は、家庭菜園をされる方にも好評なため、今後も継続的に販売していく予定です。
 そのほかにも、山口県で竹を加工して洗剤やタオルを製造している会社さんへの、竹の資材提供と商品の販売を行ったり、筍を活用した国産のメンマを作るプロジェクトにも参加しています。私たちの事業として成り立たせるためにも、筏用の竹材の販売以外のもので価値を作ることに取り組んでいます。
 これからも、竹の有効活用を進めることで広島の牡蠣業界の盛り上げに協力し、竹林の問題そのものの解決にも貢献していきたいと思っています。