【地域づくり事例】安田マルシェで地元に人の流れと笑顔溢れるコミュニティを作る
【団体プロフィール】
令和4年度 ひろしま里山グッドアワード 未来のたね賞受賞
安田マルシェ (三次市)
2020 年から三次市吉舎町安田にて、毎月隔週日曜日のマルシェを運営。「花笑カフェ」というカフェも経営している。
人口300人の地域で始めたのは
生活を助けるための小さなマルシェ
私が活動しているのは、三次市吉舎町にある人口約300 人の安田地域です。主な活動は「安田マルシェ」の開催で、月2回、隔週日曜日に開催しています。毎回平均で2〜30人の方がきてくださり、安田の方を中心に、買い物だけでなく地域の人同士で集うためのコミュニティの場としても活用していただいています。
マルシェで扱う商品は、地元安田や三次市内の方が出品されるお米や野菜・果物などの農産品のほか、第二の故郷である徳島から仕入れた加工品です。「今日はあの人の商品はないん?」との声があれば、次回のために予約をとるなど、なるべくみなさんの要望に応えられるような工夫をしつつ、マルシェ開催日以外はカフェで販売しています。
この「安田マルシェ」がきっかけで、安田自治振興会が主催する「安田でかマルシェ」が2022 年5月から開催されるようになりました。こちらは、2019 年に廃校になった安田小学校の活用を目的に始まり、これまでに2回開催。回を追うごとに集客数も増え、2022 年10月30日の第2回には約300 人ほどの来場がありました。小さな地域でのマルシェにこれだけの人が集まるのはとても嬉しいことです。
それ以外にも、書道の経験を生かした地元神社の御朱印作成や、ラジオDJの経験を生かした町内行事での司会業などを通して、地域の元気に繋がるような活動を行っています。
2023 年から、カフェの一角で行うワークショップにも力を入れ始めました。例えば、わら細工作家さんのワークショップでは、安田で出たわらを使ってもらう予定です。講師や参加者と地域のどちらにも、よい循環が生まれればと考えています。
地域活動の困難を乗り越える鍵は
軌道修正できる柔軟さ
生まれ育ったこの地に戻ってくるようになったのは20年ほど前のこと。大学進学を機に徳島へ移住し、就職・結婚・子育てを経験しました。その後、両親の通院や畑仕事の手伝いのため実家と徳島の家とを往復する生活を始めました。そんな中、2019 年に安田小学校が閉校したことで「この町のために何かしたい」と思うようになったのです。
この地域はこれまで、車で10分走った場所にあるコンビニか、週に1度来る移動販売車以外には、気軽に買い物をできる場所がありませんでした。歩くのが困難なお年寄りや交通手段のない人にとっては、すぐ食べられる物を買うこともできないのです。私はこの状況に危機感を感じ、カフェとマルシェを同時に始めようとしていました。しかし、コロナ禍のためカフェ開業は一旦見合わせ、2020 年にマルシェを先に開始。今後オープンするカフェの認知を、ここで広めていくことにしました。
開業までに一番苦労したのは場所選びです。幼い頃から縁のあった元大工さんの家を譲っていただき、今の場所に決めました。しかしそこに至るまで、工事の見積もりまでした場所が白紙に戻ったり、借りようとした場所の許可が取れなかったりと、いろいろと大変なことがありました。そんな時も「じゃあ次はどうする?」と考えながら、諦めずに探してきたのです。
何に対しても、自分で「こうしたい」と決めたことが、ダメになるのはよくあること。その時にどれだけ、軌道修正できるアイデアや考え方を持っておくかが、とても大事だと感じます。さまざまな困難に、柔軟に対応したことで今の私があり、マルシェやカフェの開業に繋がりました。
やってみる精神で挑戦した先に
活気ある町ができてゆく
私は昔から、なんでもまずは断らずにやってみることを大切にしています。自分がしっかり動いていれば、必ず何かがどこかで繋がっていくと確信しています。
徳島時代、私はラジオDJ として音楽番組を持っていたのですが、ある時プロレス番組を持たないか、と話がきました。その時のディレクターが、女性にプロレスを語らせたら面白いと考えたからだと思います。プロレスの知識がなかった私は引き受けてから猛勉強しました。粘り強くさまざまなレスラーの方を取材して作った番組は約7年続きました。
その頃からのご縁のおかげで、2023 年10月に旧安田小学校でプロレスイベントを開催することが決まりました。町の人の笑顔と活気づくりができるといいなと思っています。
また、2022 年には「ひろしま『ひと・夢』未来塾」を受講。このとき周囲からは「未来塾なんて絶対無理よ」と言われましたが、余計に火がつき、さまざまな学びを得ることができました。事業に活かせる考え方のほか、“並走型”で進めることの大切さを学んだのです。私は現在、一人でカフェもマルシェも運営しています。しかし一人では、できることにも限界があるため、“並走”してくださる方を増やすことが今の課題です。
意見という球を投げ続けても、返ってくるのがそれに対する感想だけだと、やはり一人でこの先続けていくにも課題を感じます。だからこそ、投げた球について別の角度からの具体的なアドバイスや一緒に考えてくれる人を増やしていければ、二人三脚が三人四脚にと、どんどん繋がりも広がっていくのではないかと思うのです。これからもこのマルシェを通して安田を訪れる人を増やし、この地域に活気を生み出していきたいと思います。