【地域づくり事例】安芸高田発 国内最大の竹チップ堆肥センターで里山資源活用
【団体プロフィール】
令和4年度 ひろしま里山グッドアワード さとやま未来大賞受賞
株式会社リビングファーム広島 (安芸高田市)
安芸高田市にある「美土里土づくりセンター」の管理を、2020年から受託。年間1500トン以上の堆肥生産を行える施設で、竹や木質をふんだんに入れた牛糞堆肥を生産している。
国内でも稀な大規模堆肥センターで
微生物の力を借りた有機堆肥作り
ここ「美土里土づくりセンター」は、40年以上続く堆肥センターです。地元の酪農家さんたちの牛糞処理施設としても機能しており、持ち込まれた牛糞を活用して堆肥に変えるのがこの施設の主な仕事です。堆肥にしたものは、農家のお客様にはトン単位で販売しているほか、小袋での販売、田畑への散布なども請け負っております。
2020 年に、前任の事業者から引き継いでこのセンターの管理が始まりました。その際、弊社の専務である矢木が元々林業に従事していた経験を生かして、地域の竹林の整備を始めました。そのときに出る端材をチップ化し、堆肥に混ぜ込んだものを約半年間かけて発酵させています。これらが混ざることにより、乳酸菌の力で土を育てることができ、微生物が住んでくれる土になる、これが我々の堆肥の特徴です。
そのときに出る端材をチップ化し、堆肥に混ぜ込んだものを約半年間かけて発酵させています。これらが混ざることにより、乳酸菌の力で土を育てることができ、微生物が住んでくれる土になる、これが我々の堆肥の特徴です。
竹の他にもおが粉やバークなども混ぜ込んでおり、その素材のほとんどが安芸高田市内から集まってきます。普段ならゴミになる廃棄物たちを加工することで、有機堆肥に生まれ変わり、お米や野菜の味を良くすることに役立っているのです。実際に、この堆肥を米作りで活用した農家さんからは、米の食味値がアップしたとの声も寄せられているので、これからさらにさまざまな方に使っていただきたいと思っております。
これまでこの土づくりセンターでは、散布用と言って軽トラなどで購入者が取りに来て、堆肥をそのまま荷台に積み、田畑へ持ち帰って散布するというものしか製造していませんでした。そこで私たちは、経済産業省が支援する「ものづくり補助金」を活用して小袋に詰める機材などを購入。この機材の導入により、堆肥を小袋で販売することも可能になりました。
偶然の出会いからはじまった
“ 土”ベンチャー企業の挑戦
偶然つながった縁により、安芸高田市で農業に関わる事業を起こすことになったのが、この“土”ベンチャー企業です。代表の浅野は以前、広島市内の出版社に勤務しておりました。そこでお世話になった企業の社長さんからの紹介で、共同代表の山本や専務の矢木とも出会いました。
弊社は、最初は営農型の太陽光発電事業を行う会社として始まりましたが、以前から山本は、この安芸高田市を有機農業の里にしたいとの構想を持っており、ある時、この堆肥センターの受託管理をしようという話が持ち上がりました。
安芸高田市は、立地的に中国地方のへそに位置します。そのため、山陰・山陽どちらへも交通の便がよく、「ものを出荷する」にも「ものを入荷する」にも適した場所と言えると思います。あの毛利元就が中国地方を制覇できたのは、こうした理由もあるのかもしれません。
そんな地の利に優れた場所ですが、獣害避けの柵がいたるところに設置されていて、今では「柵の中に人間が住んでいる町」とも言われるほど。人口減少も深刻な課題であり、それとともに耕作放棄地や手付かずの竹林なども問題になってきます。
私たちが放置竹林の伐採を始めると、その話が口コミで地域に広がり始めました。地域の人たちは「自分の竹藪の整備をどうしよう…」と悩んでいても、なかなか相談できる人がおらず、結局放置することが多いです。竹藪は土砂災害にも弱いため放置し続けるのは危険ですので、一気に切るのではなくまずは間伐をしていきます。そしてゆくゆくは斜面など危険な場所の竹藪を無くし、平地の耕作放棄地で竹を栽培し、計画的に間伐する管理竹林にする予定です。
“カブトムシ”が好んで集まる土で
竹チップ堆肥の用途拡大を図る
私たちが製造するこの竹チップ堆肥の用途を拡大するべく現在取り組んでいるのは、さまざまな企業と共にこの堆肥を使った事業展開をすることです。一つ目の例として、カブトムシの養殖などを手がける企業との業務提携があります。
カブトムシというと、夏に山で採集する昆虫というイメージかもしれませんが、なぜそんなカブトムシを養殖するのか。実は近年国内では観賞用のカブトムシが人気で、高品質で希少価値の高い成虫は高額で売買されています。また、カブトムシを動物の飼料として活用するという研究もされるほど、注目され、需要が高まっているのです。
そんなカブトムシの養殖に必要なのは、良質な土です。私たちの竹チップ堆肥を、研究用に活用していただいたところ、カブトムシが好むとても品質のよい土だと評価されました。今後は、養殖用の土の開発も進めていきたいと考えています。
二つ目の例として、野菜の栽培においてある企業と協力し、新しい農法に挑戦しています。これは、従来の農業のように土と水を多く使うのではなく、膜に水を浸透させ、その下に2センチほどの培地(土)を敷いてトマトなどの野菜を栽培する方法です。水・エネルギー・廃棄物が少なくて済むため、SDGs が叫ばれる昨今の新しい農業の形として注目されています。私たちの堆肥で、有機野菜を栽培し、土を活用して“食”の分野も始めようと考えています。
これから食糧危機の問題はますます現実味をおびてくるでしょう。これは、農業用の肥料を輸入に頼り、真の自給自足に至っていないからではないかと考えています。そんな状況下で、食べ物やエネルギーを自分達で作り出すために、私たちが丹精込めて作っているこの堆肥が役に立つことを信じています。