令和7年度 第1回 さとやま未来円卓会議 開催レポート

令和7年10月23日に広島市内で開催された「令和7年度 第1回 さとやま未来円卓会議」の事後レポートをお届けします。
〈3名の登壇者による発表と意見交換を実施〉
今年度1回目となる円卓会議では、チーム500登録者3名による課題解決に向けた取り組みや、構成団体に求める支援内容の発表が行われました。その後、登壇者ごとに3つのグループに分かれ、構成団体の方々と意見交換を実施しました。
【1人目:尾道市御調町 大橋和也 さん】
尾道柿園は、江戸時代から続く“柿の里”御調町菅野地区の文化を未来につなぐため、干し柿・柿酢・柿渋を一貫して生産する6次産業モデルに取り組んでいます。築50年の古民家を改装した「尾道柿渋工房」では、柿渋染めや柿入りピザづくり、カフェなど、訪れた人が景観ごと楽しめる体験の場を運営。未利用柿の買い上げや地元雇用を生むことで、地域に還元しながら“柿文化の再興”を目指して活動を続けています。
今回の発表では、尾道柿園が現在抱える、ブランド力の強化と商品の差別化・体験型農業や海外市場への参入・地域連携と持続可能な経営の強化 といった課題を共有し、構成団体のみなさんから具体的なアイデアをいただきました。

【2人目:廿日市市佐伯町 鈴木隆之 さん】
すずきエスニックファームは、広島県廿日市市佐伯を拠点に、唐辛子やパクチー、バジルなどのエスニック食材を栽培し、農薬不使用にこだわった加工・商品開発・販売までの一貫したものづくりに取り組んでいます。「唐辛子 宮島かきのしょうゆ漬」をはじめ、一味唐辛子やスパイス商品など、多様な地域発スパイスを生み出しながら、農福連携による収量拡大や就労支援にも取り組んでいます。
今回の発表では、すずきエスニックファームが現在抱える、都市部百貨店や高品質スーパーに向けた販路開拓・主力商品のブランド認知向上 といった課題を共有し、構成団体のみなさんから具体的なアイデアをいただきました。

【3人目:三原市 四方諒 さん】
四方さんは、空き家を購入したり借りたりしながら、飲食店や宿泊施設の立ち上げに携わり、地域で挑戦するローカルチャレンジャーの空き家再生も施工面でサポートしてきました。この2年半で飲食店5件、宿泊施設4件の開業を支援し、今後は継続的にローカルチャレンジャーを支えるため、不動産業の開業も視野に入れながら活動を進めています。
今回の発表では、四方さんが現在抱える、リスクを抑えながら取り組めるモデルの検討と行動指針の整理をテーマに、構成団体のみなさんから具体的なアイデアをいただきました。

【構成団体との意見交換】大橋和也 さん
尾道柿園の今後の展開をテーマに、商品戦略と生産体制、ブランドづくりについて意見交換が行われました。主力である干柿の需要は高い一方、生産量や保存方法に課題があり、冷凍や乾燥方法の改善など、長期販売に向けた仕組みづくりが必要との意見が多く出されました。また、むき作業の外部委託や工程の細分化など、無理なく供給量を増やす体制づくりも重要とされました。ブランド面では、干柿の歴史や風景を軸に地域全体で価値を育てる取り組みが必要だという共通認識が生まれ、菓子店や飲食店との連携による新商品開発の可能性も共有されました。


【構成団体との意見交換】鈴木隆之 さん
すずきエスニックファームの今後の展開に向け、商品力と販路拡大、生産体制について意見交換が行われました。主力商品の「宮島かきの醤油漬け」は香りの良さが高く評価されている一方で、都市部での販路開拓や生産量の安定が課題として共有されました。強みである香りを客観的に示すため、成分分析や官能評価の実施、オーガニック認証の取得などの提案がありました。販路面では、地元の飲食・宿泊事業者とのマッチング、広島県内での定番棚の確立、プレミアム層を狙った百貨店・高品質スーパーへの展開など、段階的に市場を広げる戦略が議論されました。


【構成団体との意見交換】四方諒 さん
四方さんの今後の事業展開について意見交換が行われ、最も重要なアイデアとして「ベーシックインカム型チャレンジショップ」という新たな店舗モデルが提案されました。店舗の運営を担う人に一定の報酬を保証し、その上で自身のビジネスにも挑戦できる環境を整えることで、四方さんが現場を離れても店舗を継続できる仕組みづくりを目指すものです。その実現には、周辺ニーズの調査や店舗を活用したい人を募る講座の開催が必要とされました。議論を通じて、ローカルチャレンジャーが育ち、挑戦を続けられる地域をつくるためには、地域住民を巻き込み、コミュニティを形成することが不可欠であるとの共通認識が示されました。


まとめ
今回の意見交換では、三者それぞれの取り組みが交わり、地域で事業を続けるうえで大切にすべき視点が浮かび上がる場となりました。
大橋さんのグループでは、干柿を中心とした文化的価値の再構築が議論され、生産体制や保存技術の見直し、ブランドづくりの方向性について多くの気づきが共有されました。鈴木さんでは、「香り」という強みをどの市場に届けていくかが焦点となり、販路拡大やマッチングの活用など、実践的な提案が次々と生まれました。四方さんのグループでは、空き家を起点に挑戦が循環する仕組みづくりが深まり、地域にチャレンジャーを増やしていくモデルの可能性が示されました。
分野は異なりながらも、共通して「挑戦する人をどう生み出し、どう支え続けていくか」という視点が重要であることが改めて確認できました。今回の対話を通じて得られた知見が、各取組の次の一歩につながり、地域全体の力を高めていくことを期待しています。